安倍総理は新しい総理が決定する明日まで,長期政権を維持してきました。安倍総理が初めて政権の座についたのは,2006年9月26日のことです。前総理は,「自民党をぶっ壊す」で自民党総裁になり,「小泉劇場」で郵政民営化を行った小泉純一郎氏です。
第3次小泉内閣で内閣官房長官に起用された安倍総理は,小泉氏の自民党総裁任期満了による退任で,その跡を継ぎました。
しかし,閣僚の「政治とカネ」問題,失言が重なり,2007年7月の参議院選で大敗,内閣改造後の国会で,所信表明演説を行ったにもかかわらず,その2日後,9月12日に辞任の意向を表明して,翌日入院,26日退陣することになりました。当然,マスコミは政権を投げ出したと非難したわけです。
表向きの辞任理由は,当時の「テロ対策特別措置法の延長を可決させるためには,私が辞めることで局面を転換するしかない」というものでしたが,その時は本人の口から語られなかった最大の理由は,持病として抱えていた潰瘍性大腸炎という特定疾患に指定されている難病の発症だったのです。
「病気を理由に職を辞すことを潔しとしない」という私安倍総理の価値観もあり,口にしなかったとの後日談があります。その後,病状は回復して,2012年12月26日,再び総理の座に返り咲きました。
第2次安倍内閣が発足し,以降,第3次・第4次と内閣改造を重ねながら,安定した政権運営をしてきました。しかし,今年8月に潰瘍性大腸炎が再発。今後のコロナ対策やミサイル防衛に関する安全保障政策に一応の道筋をつけたことで,28日「国民の皆様の負託に自信をもって応えられる状態ではなくなった」と辞意を表明したのです。
安倍総理に対する好き嫌い,実績に対する功罪は,それぞれあると思いますが,過去を振り返ってみたとき,信じる国家像を示し,それを実現する政策を打ち,行動した力強い政治家だと思います。