今年の梅雨明けも間近,蝉の声がうるさく耳につくようになってきましたね。もうすぐ夏本番です。夏を感じる風景に「風鈴」があります。最近では、軒先に風鈴を吊るして、その音色を楽しむ家庭はほとんど見られませんが、エアコンが普及する前は、涼しさを感じる夏の風物詩のひとつでした。
風鈴の起源は、中国の「風鐸(ふうたく)」と呼ばれる占いの道具で、竹林の4方向に吊り下げて、風向きや音の鳴り方で吉兆を占っていました。それが仏教とともに日本に入ってきました。今でも、お寺の屋根の部分に吊るされているのを見ることができますね。
当時は「魔除け」として風鐸を吊るすことで、流行り病や邪気を運んでくる災いの風から守ってくれると信じられていました。平安時代には、貴族の屋敷でも風鐸を下げるようになったそうです。いつ頃から風鐸を風鈴と呼ぶようになったか定かではありませんが、平安末期から鎌倉初期を生きた浄土宗の開祖、法然上人が風鈴(ふうれい)という言葉を初めて使い、後に風鈴(ふうりん)になったと言われています。
風鐸は青銅製ですが、江戸時代に西洋からガラスの製造方法が伝えられ、やがてガラス製の風鈴を飾り、音を楽しむ文化が生まれました。
現代では住宅事情などで、風鈴の音が時に生活騒音として捉えられることもあるそうですが、育った環境や文化の違いで、そう感じてしまうことは仕方がありません。
しかし、じりじりとした熱い夏、「チリン」と鳴る風鈴の音色に癒され、見えない風に涼しさを感じ、ホッとする自分に日本人としての感覚が甦ってくる。そんな時がたまにはあってもいいんじゃないかと思います。