昨日は安倍前政権での教育再生について話しましたが,今日は安全保障と憲法改正について振り返りたいと思います。
まず,2007年1月,防衛庁を防衛省に昇格しました。これによって,独自に予算が組めるようになったことは,その後の安全保障環境に対応する上で,大きな意味を持ちました。
また,憲法改正に向けての国民投票法を2007年5月に成立させています。
2013年12月,アメリカを見本にした国家安全保障会議の設立・安全保障に関する重要な情報を厳格に管理する「特定秘密保護法」の制定,2014年7月,従来の憲法解釈を変更して,限定的に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定と続きます。
「自衛権」とは,国連で認められていて,自国の侵害を防ぐために武力行使できる権利のことで,自国を守るための「個別的自衛権」と他国と協同して防衛する「集団的自衛権」があります。
日本国憲法第9条に,戦争・武力行使の永久放棄,戦力の不保持や交戦権の否認という平和主義を謳われています。一方,憲法には国民の生命,自由,幸福を求める権利が規定されています。
そこで,政府は平和主義に遵守しつつ,必要最小限の自衛つまり個別的自衛権の行使は可能という見解を取ってきました。
しかし,国際情勢の変化に対応し,国際社会の平和と安定に積極的に貢献するため,安倍政権は憲法第9条のもとで許される自衛の措置として,限定的に集団的自衛権の行使を認めることにしたのです。
限定的とは,「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより日本の存立が脅かされ,国民の生命,自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があり,国民を守るために他に適当な手段がない場合,必要最小限度の実力行使ができる」という意味です。
この憲法解釈の変更によって,2015年9月,安全保障関連法を整え,日本の安全保障政策は大きく転換したと言えます。しかし,「改憲しなくても,解釈変更で対応することができる」というコンセンサスが形成され,憲法改正の流れは失われたように感じます。いずれにしても,憲法第9条の解釈と安全保障の観点で大きな論争が生まれた政権でした。