トランプ氏とバイデン氏の政策の違いを2つ紹介しましたが,もう少し続きの話をします。
3つ目は,外交や安全保障の考え方の違いです。
トランプ大統領は「アメリカファースト」を掲げ,グローバリズムに否定的な立場をとって,国際協調より自国を優先し,同盟国との摩擦も辞さない外交を推し進めてきました。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定),イラン核合意,地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」からの離脱,さらに新型コロナウイルス感染拡大の批判をかわすため,その原因は中国による隠蔽にあり,中国寄りのWHO(世界保健機関)の責任を強調し,脱退を通知したことなどが例として挙げられます。
また,同盟国との関係ではトランプ大統領がアメリカの負担が重く不平等だとして,各国に防衛費の増額などを要求したり,駐留するアメリカ軍を縮小する意向を示しました。
一方,バイデン氏は国際社会での指導力を取り戻し,国際協調や同盟関係をより重視する姿勢を示しています。トランプ大統領のもとアメリカは孤立したと批判して,「パリ協定」「イランとの核合意」への復帰や,WHO脱退の撤回を掲げています。
中国やロシアに対しては,トランプ大統領と同じように,対立姿勢を鮮明にしています。ただし,同盟国との関係を強化を図り,協力して国際的な規範のもとに圧力をかける姿勢を示しています。
最後に日本との関係ですが,日米地位協定の有効期限が来年3月末に迫っていて,これに基づく在日アメリカ軍の駐留経費,いわゆる「思いやり予算」について,日本の負担をめぐる協議が本格化します。日本政府は否定しましたが,トランプ大統領は,現在の4倍に引き上げるよう伝えてきたと言われています。バイデン氏の場合も,日本にこれまで以上の負担を求めてくる可能性があります。日本が関係する通商分野で焦点となるのはTPPですが,バイデン氏は明確な態度を示しておらず,復帰するかどうかは現時点では未知数です。
そして,日米貿易協定の今後についても,明らかになっていません。
他にも,移民問題や教育問題など争点はありましたが,バイデン氏が大統領就任後,どれだけ政策を実現できるか,その手腕に期待したいと思います。