バイデン氏の勝利が確実となった米大統領選挙の今後の日程ですが,12月14日に選挙人による投票,1月6日に正式決定,1月20日が大統領就任式となります。
バイデン氏は各国首脳と相次ぎ電話会談を行うなど,着々と政権移行に向けた準備を進めています。一方,トランプ大統領は「この選挙はまだ終わっていない」と選挙結果を受け入れておらず,「選挙をめぐる不正が起きている」と主張し,訴訟を起こしています。
しかし,不正の証拠は示しておらず,裁判闘争の勝ち目は見えません。
そんな中で,アメリカ民主主義の伝統のひとつに,「敗北宣言」という素晴らしい慣習があります。それは選挙結果が出る前に負けた候補者が勝った候補者に祝福のメッセージを送り,同時に政権移行に協力することを約束するというものです。
この敗北宣言は,法的に定められているわけではありませんが,アメリカの民主主義と選挙制度の正当性を守るための紳士協定といえるもので,敗者が納得して負けを認めることで,激しく争った後の団結を支えてきました。つまり,アメリカの美徳というべきものです。
ただし,最初にいったように,正式には12月14日の選挙人が州ごとに投票を行い,1月6日に集計されて決定されます。
もし,それまでに訴訟が認められ,法的な争いがもつれて,選挙人が確定できない場合,合衆国憲法に従って,その州議会が選挙人を任命することになっていて,有権者の直接投票でバイデン氏が勝利していても,トランプ氏を勝者とする選挙人を任命することができてしまうのです。
今回,トランプ大統領が負けを認めず,裁判に持ち込もうとしている理由はそこにあります。訴訟に勝たなくても,訴訟が認められて裁判が長引いてくれればいいわけです。
仮に,1月6日の時点で,過半数の270人に届かなかった場合,連邦議会下院で各州1票を投じる「臨時投票」を行うことになり,トランプ氏再選の可能性がでてきます。
さて,トランプ大統領が負けを認めないのは,様々な疑惑があるため,政権から離れると訴追されることを恐れての行動との話もあります。また,負けを認めて,この事態を収めることで訴追しないように,バイデン氏に取引を持ちかけるための行動だとの憶測もでています。
いずれにしても,往生際が悪いとはこのことですが,これがトランプだと,ある意味すごい大統領だと,思わずにはいられません。