最近,日中は穏やかな日が続いていますね。こんな日のことを「小春日和」といいます。
「春」という言葉を使っているから,ついつい「春のちょっとした暖かい日」と誤解してしまいますが,そんな使い方をすると「おバカさん」といわれてしまいますので,注意してくださいね。
「小春」というのは,旧暦10月のことで,この時期は寒さが増してくる時期ですが,たまに春の日ように陽射しが柔らかでポカポカと暖かい日があることから,そう呼ばれるようになりました。
いつから言われるようになったかは分かりませんが,鎌倉時代の吉田兼好が記した「徒然草」第155段に「十月は小春の天気,草も青くなり,梅もつぼみぬ。」と,この言葉がでてきます。徒然草の内容は多彩ですが,この時代の無常観に根差した随筆で,第155段には春夏秋冬と生老病死のことが書かれています。
それから「小春日和」の「日和」ですが,これは「晴れたよい天気,何かをするのに,ちょうどよい天気」という意味です。
つまり,「小春日和」は,現在の11月から12月上旬の春の日のような暖かく穏やかに晴れた日ということになります。空高く澄んでいる「秋晴れ」とはイメージが違うことが分かりますね。強いて言えば,「晩秋の麗らか日」という表現が近いのではないでしょうか。
私たちは,小さいという程度を表す「小」をつけることで「ような」という意味を読み取る言葉遣いをします。例えば,古い町並みや風情が京都に似ている「小京都」や,江戸のように栄えた町,江戸時代の面影を残す町を「小(こ)江戸」というように,春ではないけど春のような「小春日和」という言い回し,寒さに向かう中で,たまに訪れる暖かな陽射しを浴び,気持ちがホッとする,そんな情景が浮かび,何となくいい感じですよね。