2月15日(月)森会長辞任

 毎日,色々な事件が起きて,話題になることがたくさんありますが,それに対して何を感じるかは,その人の「価値観」によるものです。人の考え方は時代とともに変化してきました。その中で,そのもののあるべき姿が模索され,形成され,普遍的価値観も作られてきました。「平等」とか「表現の自由」といった人権もそのひとつですね。

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森会長の辞任も,そういった価値観に対する問題のひとつです。

 

 一連の流れを紹介しておきます。

 3日に日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会で,「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」など女性蔑視の発言をしました。日,謝罪して発言を撤回。しかし,国内外のメディアから「差別的」と厳しい批判が起こり,SNSでも辞任を求める声が相次ぎました。大会ボランティアの辞退に対して日,自民党,二階幹事長の「おやめになりたいというのだったら,新たなボランディアを募集する」という発言も,看過できない問題となりました。

 9日,国際オリンピック委員会(IOC)が森発言は「極めて不適切」とする声明を発表。10日,最高位スポンサーのトヨタ自動車社長から「トヨタが大切にしてきた価値観と異なり,誠に遺憾」とコメントを発表。11日,森会長は評議員で元日本サッカー協会会長の川淵氏に後任を依頼。12日,辞任表明,川淵氏は辞退…こんなところです。

 

 森発言の問題点は,「女性」と「無駄に長い発言」を結びつけた性差別にあります。これは,社会の倫理観にも,オリンピック憲章(特に「オリンピズムの根本原則」の6)の差別を禁止するという精神にも反したものです。森発言の中には女性理事の数に否定的な言葉も含まれていました。ちなみに,JOCはスポーツ庁の「ガバナンスコード」に沿って,女性の社会参加を引き上げるため,女性理事40%以上という目標値を掲げています。

 

 さらに,日本社会の会議の在り方です。「終わらないから困る」「わきまえ」といった言葉が使われていましたが,これは「忖度」ありきで,民主的な議論を妨げる矛盾です。

 

 そういった点に対して,日本は寛容に受け流す傾向がありますが,このような民主国家としての精神的な貧しさ,意識の低さを世界に発信してしまいました。

 しかし,今回,多くの人が疑問を持ち反応したことは,健全な精神が損なわれていないという証であり,日本も捨てたもんじゃないと期待を感じるものでした。