3月16日(火)お彼岸

 もうすぐ春分の日,今年は20日です。秋分の日と並んで,年のうち昼と夜の時間が同じになる日で,太陽は真東から昇って真西へ沈みます。春分の日は,「自然をたたえ,生物をいつくしむ」日とされています。それは,季節の変わり目で春になり,万物の命が輝き出す姿に感謝するためで,国民の祝日となっています。

 

 それとともに,春分の日,秋分の日はそれぞれ「春のお彼岸」「秋のお彼岸」といって,彼岸会と呼ばれる仏事が行われたり,お墓参りをするといった日本独自の文化があります。

 「暑さ寒さも彼岸まで」と言う言葉を聞いたことがありますよね。これは,春分の日や秋分の日を境に,それまでの寒さや暑さが和らいで過ごしやすくなるという意味です。

 

 ところで,この「お彼岸」とはどういうものか知っていますか。さきほど,お墓参りをする日といいましたが,なぜのこの日にお墓参りをするのでしょうか。

 まず,お彼岸は正確にいうと,春分,秋分の日の前後日を併せた日間のことです。お彼岸の始まりを「彼岸の入り」,真ん中に当たる春分,秋分の日を「中日(ちゅうにち)」,終わる日を「彼岸明け」と呼んでいて,明日から23日までが,春のお彼岸となります。

 

 さて,仏教では,煩悩に満ちあふれるこの世を「此岸(しがん)」と呼び,悟りの地である涅槃を「彼岸」と呼んでいます。そして,この世の迷いや煩悩を断ち切って涅槃に至るための修行が行われてきました。お彼岸とは,もともと彼岸に到達するための修行期間だったんです。

 

 そして,信心により極楽浄土に往生できるという浄土信仰が広がり,太陽が沈む西の方角に,死して行き着く極楽浄土があると考えられていました。ですから,太陽が真西に沈む春分や秋分の日は大切な日で,この日が此岸と彼岸が一番つながりやすい日として,人はお寺にお参り行き信心を深めて,同時に浄土にいるご先祖様に思いをはせ,お墓参りをして供養するという風習ができあがったのです。

 

 今では,一般の人にとって宗教への関心も薄れてしまい,お墓参りの風習だけが残っているのが現実です。ましてや修行するなんて想像もきませんが,修行の内容は「六波羅蜜(ろくはらみつ)」といって,つの善行を指していて,見返りを期待しない行為,自らを戒めること,怠けず努力することなどです。すべてを実践できる人はそうそういないでしょうが,私たちでも意識して生活するくらいはできます。自分なりの正しい生き方を心がけていきたいものですね。