先週から,アメリカ大統領選挙の仕組みについて,話してきましたが,今日はその投票について,今アメリカで問題になっている郵便投票の話をします。
投票といえば,普通,投票日に投票所へ行って票を入れますよね。
しかし,11月3日の大統領選挙当日の投票が難しい人たちは,期日前投票ができます。期日前投票には,有権者が投票所に行く「直接投票」のほか,投票用紙を郵送する「郵便投票」があります。すでに,全米の6割近い29の州で投票が始まりました。
前回2016年の選挙のときは,21%の人が郵便投票をしたそうです。今回は,コロナ感染拡大で,郵便投票が大幅に増える見通しです。郵便投票のメリットは投票率のアップですが,投票率が上がると民主党に有利になるといわれています。これは,低所得層やマイノリティーに民主党の支持者が多く,彼らの投票を妨げるような動きも目につく中,郵便投票が有効な手段となるからです。
それに対して,トランプ大統領は,根拠なく郵便投票は不正投票につながると発言を続けています。確かに有効票の確認作業など,集計のプロセスで大きな問題が生まれるかもしれませんが,専門家の意見では,偽装投票を行うことは現実的ではないと指摘しています。
では,なぜトランプ大統領は,「郵便投票は不正の温床だ」と言い続けているのか。憶測ですが,この選挙で負けたとき,「郵便投票で大量の不正投票があった」と主張するための保険の可能性があります。そして,僅差で負けた州に再集計を要請して,ゴネる作戦です。
過去には,2000年,ゴアvsブッシュの大統領選挙で,再集計を求める泥仕合が行われ,最終的には連邦最高裁が再集計の停止,ブッシュの勝訴となる判決を下しています。
実は,トランプ大統領は,連邦最高裁のギンズバーグ判事が9月18日に亡くなるとすぐに,保守派のバレット判事を指名しました。アメリカ国民から愛されていたギンズバーグ判事は,亡くなる数日前に,後任人事は次の大統領が就任してからにして欲しいという願いを託していたにも係わらずです。これが選挙前に承認されると,最高裁判事9人のうち保守派6人と共和党の勢力が大きくなり,もし,選挙結果が法廷闘争になった場合,裁判を都合よく進めるための伏線と考えられます。
いずれにしても,郵便投票の是非はスマホ投票とともに,選挙の在り方として今後,論議されるべき課題だと思いました。