今年のノーベル賞の発表が,10月5日の生理学・医学賞から始まり,12日の経済学賞ですべての受賞者が出そろいました。日本は2019年化学賞の吉野彰(よしの あきら)さん,2018年生理学・医学賞の本庶佑(ほんじょ たすく)さんに続いて,3年連続を期待していましたが,残念ながら受賞を逃しました。
このノーベル賞は,ダイナマイトの発明者,アルフレッド・ノーベルの遺言で作られた賞で,「物理学賞」「化学賞」「生理学・医学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」の6つがあります。
そのうち,物理学賞,化学賞,生理学・医学賞の3部門は,自然科学部門で世界最高の栄誉ある賞です。
また,「経済学賞」は遺言にはなく後から設立されたもので,賞授与の原資もノーベル財団ではありませんが,一般的にノーベル賞の一部門として扱われています。
その選考過程は極秘で明らかではありませんが,ノーベル委員会が,世界各国の専門家や過去の受賞者などに依頼して推薦された人とノーベル委員会が独自に追加した人が,候補者に選ばれます。
ノーベル賞の選考基準に影響を与えているのが「論文の引用された数」といわれています。
しかし,それだけではなく,受賞するためには,ある程度の年月をかけて,その業績が人類に貢献していると評価を得なければなりませんから,簡単には受賞者を予測できません。
ところで、日本にはノーベル賞を期待できる科学者が,まだまだ多くいます。
例えば,東京大学卓越教授の藤田誠さん,分子の「自己組織化」技術の開発により有力な候補者といわれていました。
その反面,自然科学研究の将来は危惧されています。それは学者を目指す学生の大きな経済的負担であったり,自由に研究できる環境が失われている状況のためです。優秀な人材は企業に流れてしまっています。企業で研究を進めた人からノーベル賞受賞者を輩出していますが,それは,大学での基礎研究の賜物です。
研究者の減少,論文数の減少,研究費の削減が日本の科学技術の低下につながります。
大学でできなければ,産学連携で若手研究者が安心して研究できるポストを積極的に用意する仕組みが必要だと思います。