公園や街路樹に植えられた銀杏が,いつのまにか黄色く色づき,日ごとにその葉を落として,歩道には落ち葉のじゅうたんができています。野山では,紅葉が佳境となって,秋の深まりを感じることができますね。
紅葉狩りのシーズンは,地域によって違いますが,11月上旬から12月上旬がその見頃だといわれています。落葉樹は,春に芽吹き,夏に新緑となって,秋に色づき,冬に葉を落とす,そんな姿を私たちに見せてくれます。特に,秋の色づきを「紅葉」といって,赤や黄色に彩られた野山を眺めて楽しむことを「紅葉狩り」と呼んでいます。
この紅葉狩りは,さかのぼると「万葉集」の中に「紅葉」「黄葉」という言葉があり,奈良時代から,人は山を染める紅葉に心を動かされていたことがわかります。しかし,今のように行楽として紅葉を見に行くといったことは,なかったようです。
平安時代に入ると,貴族の間で,紅葉を見に,山や渓谷へ行く「紅葉狩り」が始まったそうです。見るだけなのに,なぜ「狩り」という言葉が使われるのか。その理由もこのあたりが由来となっていて,本来「捕まえる」とか「採る」という意味ですが,当時の貴族に「歩く」という行為は品がないという考え方があったため,紅葉を愛でるために外に出歩くことを「狩り」に見立てて,「紅葉を狩りに行く」と言い換えたという説があります。
いずれにせよ,平安時代の「紅葉狩り」は,美しい紅葉のあとに散る姿から「もののあわれ」を知り,世の無常を感じさせるものだったのかもしれません。
紅葉狩りを楽しみようになるのは,室町時代以降で江戸時代中期には,紅葉の名所を紹介する本も出され,一般の人びとも純粋に紅葉を楽しむ「紅葉狩り」になっていきました。
春の賑やかな「花見」も楽しみですが,物静かに眺める「紅葉狩り」もまた,日本の原風景を切り取り,その中に身を委ね過ごすことができる貴重な時間だと思います。