先週の話の中で,「カーボンニュートラル」と「デジタル化」について触れましたが,このふたつは日本の大きな課題ですから,皆さんの将来のためにも理解してもらいたいと思います。
そこで今日は,なぜ菅総理が「2050年までに温室効果ガスCO2の排出量と吸収量を±0とする目標」を掲げたかを伝えます。
この話のおおもとは,地球温暖化による気候変動が地球環境を破壊していることです。そして,その対策は単純で「CO2を出さない社会」に転換していくことなんです。
この問題は国際社会の課題として,議論されてきましたが,2015年,パリ協定で 2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みが合意されました。
これは,世界共通の長期目標を「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に保ち,1.5℃に抑える努力をする」「21世紀後半には,温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる」としています。
その後,2019年9月国連本部で「気候行動サミット」が開催され,多数の国と都市が「2050年までにCO2排出量をゼロにする」と表明しました。日本は小泉進次郎環境大臣が出席しましたが,削減目標が低いまま,消極的な日本に発言の機会はありませんでした。
こうした中,菅総理の表明でようやくスタートラインについた日本,この目標に対する課題は簡単ではありません。明日は,どんな課題があるのか挙げてみたいと思います。
ところで,パリ協定の序文に「climate justice(クライメット ジャスティス)」という言葉があり,日本語にすると「気候正義」という聞きなれない言葉です。
先進国や新興国が化石燃料を大量消費して,地球温暖化が進み,異常気象や自然災害が起きています。その被害は,自国だけでなく責任のない途上国や若い世代に及びます。こうした気候変動問題は「国際的な人権問題で,この不公平,不正義を正さなければならない」という考え方が気候正義です。こういった認識をもって,私たちは行動しなければなりません。